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トリオ・アコードトリオの原点となった「幽霊」真ん中に武満を挟んだプログラム白井圭(ヴァイオリン)、門脇大樹(チェロ)、津田裕也(ピアノ)。トリオ・アコードは東京藝大の同級生だった3人が在学中の2003年に結成したピアノ三重奏。きっかけは室内楽の授業のためだったのだが、ほぼ毎日合わせていたというから、音楽的にも性格的にも共鳴し合ったのだろう。門脇「後輩が、僕たちが合わせているのを横目に見ながら昼食に出て、夕方に戻ってきたらまだ弾いていたと言ってました」白井「半分はおしゃべりだったかもしれないけどね(笑)」津田「ああでもない、こうでもないと。あの時にとことんできたから、今があるのだろうと思います」じつはその授業で最初に取り組んだのが、10月のコンサートでも弾くベートーヴェンの「幽霊」だった。ベートーヴェン・イヤーの昨年、トリオのデビュー盤にも収録した、思い入れのある曲。白井「ベートーヴェンの新しい試み。ピアノ三重奏という編成でチャレンジしている作品です」津田「すごく生命力を感じます。今回のプログラムでは、この曲がニ長調なので、繋がりがいいと考えて、後半にニ短調のメンデルスゾーンの第1番を選びました。ロマン派を代表する三重奏曲。そこに武満徹さんのInterview©T.Tairadate〈ビトゥイーン・タイズ〉を挟んだら、がらりと雰囲気が変わって面白いかなと。時間の流れ方が違うというか、美しい響きが印象的な曲なので、対比が生きると思っています」白井「それぞれ全然違う響きがするので、同じ編成で、作曲家によってこんなに違うんだというのを聴いていただけるのではないでしょうか」門脇「3つの楽器がすごく親密なアンサンブルをすることもあれば、各楽器に、ソロなどの見せ場もある。そんなピアノ三重奏のいろんな面も楽しんで聴いてもらえるはずです」津田「あとは舞台で起こっている音の会話を、皆さんと共有できたらいいですね」白井「ぜひリラックスして、浴びるように聴いてください。“わかる”とか“わからない”とかではなく、とにかく楽しく聴いてもらえたらうれしいです」取材・文/宮本明11