浜離宮朝日ホール|朝日ホール通信

1992年オープンの室内楽専用ホール。特にピアノや繊細なアンサンブルの音色を際立たせる設計でその響きは世界でも最高の評価を受けています。


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コンスタンチン・シェルバコフピアノ・リサイタル©Jen-Pin第1回ラフマニノフ・コンクールの覇者による生誕150周年にふさわしいプログラムセルゲイ・ラフマニノフ生誕150年を迎える今年、コンスタンチン・シェルバコフが、すべてラフマニノフ作品によるリサイタルを浜離宮朝日ホールで行なう。1963年シベリア西部アルタイ地方に生まれたシェルバコフは、モスクワ音楽院ではゲンリフ・ネイガウス門下のレフ・ナウモフのもとで学んだ。20歳で第1回ラフマニノフ・コンクールに優勝。当時、演奏機会の少ない第4番の協奏曲を披露したという。シェルバコフの名が広く知られるようになったきっかけは、1990年のイタリアのアゾーロ音楽祭である。シェルバコフは、ラフマニノフのピアノ作品全曲演奏を披露し、それを聴いていたスヴャトスラフ・リヒテルが彼を絶賛。さらに、1998年からはチューリヒ芸術大学で教授を務める。ショパン国際コンクールで優勝したユリアンナ・アヴデーエワを育て上げるなど、教育面でも高く評価されている。シェルバコフの演奏は、圧倒的な演奏技術に裏付けられた推進力あふれるもので、同時に詩情豊かなリリシズムに満ちており、ロシアのピアニズムの流れを受け継いでいる。私が彼の直近のリサイタルを聴いたのは、2015年。ベートーヴェンとショパンという、彼にとって得意な作曲家を軸としたプログラムであった。音楽と真摯に対峙し、内面から情熱をみなぎらせ、ドラマティックに作品をまとめ上げる。特にベートーヴェンでは、シェルバコフの深い思索に触れた思いがした。彼の時代のフォルテピアノでの演奏を彷彿とさせ、細やかなペダルの表現を通して、多彩な弱音の世界を見事に生み出し、同時に揺るぎない音楽を構築。この作曲家の孤高の姿を聴く者に焼きつける。そしてショパンは、透明感あふれる音でしなやかで劇的な音の世界を創出した。今回は、オール・ラフマニノフ・プログラム。まさに、シェルバコフの源流にある作曲家である。曲目は、「前奏曲集」作品23&作品32や「練習曲集〈音の絵〉」作品33&作品39、「サロン風小品集」からの抜粋などによるもので、これらはショパンの影響を受けた創作である。みずからもヴィルトゥオーソ・ピアニストとして活躍したラフマニノフならではのダイナミックなピアニズムと濃厚な叙情性あふれるこのプログラムは、シェルバコフにはうってつけだ。第1回ラフマニノフ・コンクールの覇者シェルバコフによる、まさにアニヴァーサリー・イヤーにふさわしいリサイタルである。文/道下京子(音楽評論家)コンスタンチン・シェルバコフピアノ・リサイタル〜TheBestofRachmaninoff〜11/13(月)19:00一般¥5,500U30¥2,000ラフマニノフ:10の前奏曲Op.23より13の前奏曲Op.32よりサロン小品集Op.10より第3曲「バルカロール」、第5曲「ユモレスク」練習曲集「音の絵」Op.33より第2番、第5番、第8番練習曲集「音の絵」Op.39より第5番、第8番、第9番ほか5


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